愛犬の車酔い対策


愛犬を車に乗せて移動する機会は少なくありません。少し遠くの公園での散歩に連れて行きたいとき、愛犬との旅行に車で行きたいとき、動物病院に連れて行くときなどなど。いつもなら徒歩で動物病院に連れて行くのところを、愛犬の体調が悪くて歩かせたくないために車に乗せることになった、ということもあるでしょう。

「車の中で吐いてしまいました」
「体調が悪いので受診したのですが、車に酔って具合がさらに悪くなってしまい、病院に着いたら待合室で吐いてしまいました」
「車に乗せるとすぐに酔ってしまうので、なかなか病院まで連れてこれません」
こんな声を飼い主さんから聞くことも少なくありません。

イヌのなかには振動に弱い体質のものもいて、その場合はとくに車に酔いやすいことがあります。また、体調が悪いときは、車に乗ったことで症状がさらに悪化してしまうこともあります。

人間の車酔いの症状は主に嘔吐ですが、犬は嘔吐だけでなくさまざまな症状が現れます。そわそわしたり震える、あくびをする。吠えたり鳴いたりするのも車酔いの徴候の場合があります。最初によだれを出しはじめ(流涎)、やがて嘔吐へとつながることもあります。

ところで、車を運転していてちょっと強めにブレーキを踏んだときやカーブでハンドルをきったときに、座席の荷物がすべり落ちたなんてことはありませんか。それと同じうように、ちょっとした加速や減速、ハンドルさばきによって“G(加速度)”が愛犬にかかりますが、そのとき愛犬はその慣性力に負けないように過度の力を入れて踏ん張ります。

耳の奥の“内耳”にある“三半規管(さんはんきかん)”という器官には、身体の傾きを感知する働きがあります。車の振動や“G”によってこの三半規管が刺激されることで、自律神経が失調状態になりますが、これが車酔いの原因です。

さて、車に酔いやすい愛犬も、少し工夫することで車酔いを予防したり、症状を軽くすることができます。

まず、車に乗せるとき、愛犬をケージに入れましょう。

愛犬が車の中で自由に動き回れる状態だと、Gがかかったときに愛犬は身体を支えるために強く踏ん張らないといけません。この過度の踏ん張りが車酔いを悪化させるので、それを防ぐためです。さらにケージの中にバスタオルなどをつめて、愛犬が少し動きにくくするのもよいでしょう。またシートベルトで固定できるケージも販売されているので、そのようなケージを利用するのもよいでしょう。小さいケージであれば、飼い主さんが膝の上でかかえてもよいでしょう。中型犬や大型犬の場合は、リードやベルトを用いて体を固定することも効果的です。

また、声をかけてあげると、愛犬が安心します。不安は症状を悪化させ、嘔吐などを引き起こしてしまうことがあるからです。声かけで飼い主さんが側にいることを認識するだけでも、愛犬の不安を和らげます。

ヒトの車酔い対策と同様に、車の窓を開けて新鮮な空気を取り入れるのもよいでしょう。その場合、万が一の愛犬の飛び出しに注意して、小さめに開けるようにしましょう。

車内の温度調節にも気を配りましょう。冬の暖房の利き過ぎは、車酔いを促進する場合があるので気をつけましょう。

長時間のドライブでは、こまめに車を停めて休息をとりましょう。もし「流涎」など車酔いの徴候が現れたら、いったん車を停めて車外で休ませ、犬がリラックスできたらまた運転をはじめるようにしましょう。

なお、胃の中に食べ物が入っていると車酔いを誘発(助長)してしまうので、乗車前の食餌は控えるようにしましょう。

また、小さい頃から車に慣れさせておくと、車酔いになりにくいとの報告もあります。仔犬のころから、車に慣れさせておくのもおすすめです。もちろん、成犬になってからでも車に慣れさせることも可能です。

このような予防策にもかかわらず、犬が体調を崩し、嘔吐や粗相をしてしまうことを想定して、ペットシーツや予備のマットなどをあらかじめ用意しておくとよいでしょう。

ヒトと同様に、犬にも車酔いを予防する内服薬があります。旅行などあらかじめ車に長時間乗せることが分かっている場合には、酔い止め薬をかかりつけ獣医師から処方してもらってもよいかもしれません。従来の薬は、眠くなったりするなどの報告もありましたが、最近使われている薬はそういった副作用がないものもあります。せっかく目的地に着いたのに、眠くて元気がない、なんてことがあったら残念ですよね。獣医師とよく相談してください。

車に乗っても愛犬が体調を調崩さなくなれば、愛犬と一緒に行動する範囲や選択肢も増え、愛犬と過ごす人生がさらに豊かになることでしょう。(R)

写真提供:無料動物写真素材 アニマルフォト http://anijan.net/photo/

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